【感想】『あのコはだぁれ?』清水崇監督 えっ無茶苦茶怖かったんだけど

映画

公開からだいぶたっちゃったけど、タイミング逃して観れてなかった『呪怨』の清水崇監督最新作『あのコはだぁれ?』を見てきた。
結構怖いという口コミをちらと聞いたというレベルで、ほぼほぼ前情報なしで観た。
予想を超える怖さと面白さを味わえたので感想話す。

映画『あのコはだぁれ?』公式サイト|大ヒット上映中
ある夏休み。補修授業を受ける男女5人。この教室には、”いないはずの生徒”がいる――。

※以降ネタバレ含むのでご注意!!

まずいきなり冒頭から不意打ち喰らった。

「あれ、この屋上のシーンどっかで見たことある。」、
「でも見たことあるシーンとはちょっと違うかも?」という頼りない自身の記憶力と格闘しながら、

「ん?これ清水崇監督の前作『ミンナのウタ』とがっつり世界線一緒じゃん!後日談なの?」と気づき個人的に『ミンナのウタ』も結構楽しめたのでいきなりテンション爆上がりで、早速ルンルンになった。

『あのコはだぁれ?』自体は『ミンナのウタ』を知らずに見ても、全然一つの作品として楽しめるなあとは思ったけど、個人的には見てると”高谷さな”の異常性・怖さを知っているからこそ味わえる恐怖があるのかなと思った。
登場人物も前作から引き続き出てる人もちらちらいて、「あっ!あの人じゃん」的な楽しさもあった。

監督自身インタビューで前作『ミンナのウタ』を観てる人も観てない人も楽しめる作品にしたくて、あえて後日譚なのか、前日譚なのかは言及されてないとのことでまんまとやられた。

昨年、「本当に怖いホラー映画」として話題になった『ミンナのウタ』のDNAを引き継ぐ最新作『あのコはだぁれ?』が7月19日(金)に全国公開いたします。
映画『あのコはだぁれ?』公式サイトより

清水崇監督のインタビュー記事載ってます。

一気に世界に連れ込んでくれた”君島先生が高谷さなの家を訪れるシーン”

語りたいシーンは山ほどあるけど、一つは君島先生が高谷さなの家を訪れるシーン。

一見、ありふれた父母、祖母と仲睦まじく過ごすどこにでもいそうな家族のように見えるけど、この家族の異常性が徐々に暴かれていく感じがたまらない。

祖母の世話をするといって、居間を抜けて隣の部屋に行くさな。だがその様子が何だかおかしい。
やや開いたふすまの隙間からちらちら見えるさなの様子が何か尋常じゃないことをしてる。
「えっ?えっ?えっ? 何してんの?」という観客の気持ちを間髪入れずに体現してくれる渋谷凪咲演じる君島先生の表情もすごいいい。

そこへ追い打ちで同じやりとりを何度も何度も繰り返す高谷さなの父と母、最終的には気味悪いセリフに変わり、目の前の出来事が今今起きている現実じゃないことがはっきりわかる。
この会話ループのシーン、気味悪い状態が延々と続くんじゃないかと思わせる生殺し感がたまらなく怖いし、「ああもう、早く楽にしてくれ!!」って感じだった。
「やばい、この家にこれ以上長居してはいけない」そう思ったとき恐怖が一挙に畳みかけてくる。
はい、もう最高です。

場面は切り替わり、トイレから出てくるおばあちゃんのビジュアルがまざまざと画面いっぱいに映るが、これまた超怖い。暗がりでよく見えないとかそんなもんではなく、家の照明で煌々と照らされた恐怖の権化といわんばかりのおばあちゃんの様子、是非自分の目で見てほしい。

家のつくりも広々というよりは狭いこじんまりとした印象でそんな逃げ場のない場所でこんな恐怖体験をしたらと思うと、怖いではすまないし没入感がすごかった。トラウマ級。
『ミンナのウタ』の時も思ったけど、さなのお母さんの顔なんであんな怖いんだろ。

ここにきてなお新しい恐怖表現 – ゲームセンターのシーン

怖いシーンのネタがどんどんいろいろな作品でやりつくされ、なくなってきているように思える近年の作品だけど、ゲームセンターでの一幕、クレーンゲームのシーンは中でも印象的だった。

男子生徒が夢中でクマのぬいぐるみ(かなりでかい)の景品をとろうとクレーンゲームに興じているシーン。
取れない景品に腹を立て、無理やり景品の取り出し口からノールックで景品を引っ張ろうとすると、何かぬめっとした足か手か(忘れた)に触れてぎょっとする。
立ち上がりぱっと視線を台の中へ戻すと、中には空ろな表情でひび割れた顔をした高谷さながいる。それだけでも十分異形感があって怖いけど、クレーンゲームの台の中という狭い空間の中で手足をバタバタさせて、クレーンゲーム特有の明るい照明と異形というミスマッチ感も相まって相当怖いし気持ち悪い。
しかも一瞬だけそんな風に見えただけとかでもなく、その状態がしばらく続くからもうどうしようもない。監督、頭おかしいのかと思った。(褒めてる)

パワー全開さなちゃんVS君島先生

前作にも増して作品全体の恐怖具合、さなの霊自体がもってる力みたいなものは今作の方が強いんじゃないかと思った。

随所で高谷さな自身が生き生きと(死んでるけど)怪異として襲ってくる印象を受けた。
そんなパワー全開さなちゃんと相対することになる君島先生だけど、先生自体は今作主役で初登場。
高谷さなをとりまく世界の中ではぽっと出な彼女がなぜ高谷さなと対峙し、向き合うことになっていくんだろうと思っていたら、ちゃんとその理由は用意されてた。

物語冒頭、君島先生の目の前で車にふっとばされて意識不明になる君島先生の彼氏、悠馬。
高谷さなによる事故だったがなぜ彼が襲われなきゃいけないのか、という謎を抱えて物語は進んでいく。
悠馬の幼少期の絵、現在も養護施設で生きていた高谷さなの父母と会ったことなどから、なんと悠馬は幼いころに施設に預けられた高谷さなの弟、”としお”その人だということがわかる。(としおというと呪怨のとしおくんがちらついてしまって余計コワかった)

まじかよ。。伏線は今思えば確かにあったけど、見てるときは素で「巧いなあ」とただただ感激。
悠馬が高谷さなの弟なれば話は早い。だからこそ高谷さなは自分の弟であるとしおの最後の音を集めようと襲っていた。なるほどね。
それに気づいた君島先生もみすみす彼氏をさなの手に渡すわけにもいかず、めでたくさなという存在と向き合わなきゃいけなくなる。

恐怖映画として単に怖さというところにとどまらず細部まで練られた設定や脚本が面白いところだなとしみじみ思った。

いざ、高谷さなと対峙する君島先生。
そのとき目の前で生徒の一人、三浦という女の子が今まさに高谷さなの手に落ちようとしており君島先生はとっさに自分の名前を宣言してしまう。(高谷さなが〇月〇日 ”だれだれの名前” と告げて最後の音(死ぬ瞬間の音)を録るとその人は死んでしまう)

結果場面は変わって、屋上から突き落とされそうになってしまう君島先生。
このあたりからのラストへ畳みかけは本当に鬼気迫り、緊迫感が尋常じゃない。
手をかけ踏ん張る君島先生だけど三浦に憑依したさなにやられるというその時、悠馬が幽体離脱?したのかその手をつかんで助けてくれる、間一髪助かったように思えたが。。。

ラストはぜひご自身の目で見てほしい。
最後のネタ晴らしのところも含めて、個人的に超好みだった。
そこまでやるかっていう気概を感じるし、不愉快・不穏な気持ちにさせてくれえと映画を見に来たこちらの期待を裏切らない。

『あのコはだぁれ?』ポスタービジュアルとかからは学校もので夏のエンタメ恐怖映画ねという感じでポップな印象も受けなくはないけど、生半可な気持ちで行ったら思いっきりぶん殴られるそんな映画だった。清水崇監督ありがとう。

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